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特別動画
作品解説
《カピトリーノの牝狼(複製)》
《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》
《コンスタンティヌス帝の巨像の左手(複製)》
《カピトリーノのヴィーナス》
《ローマ教会の擬人像》
《カンピドリオ広場の眺め》
《教皇ウルバヌス8世の肖像》
《トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製》
《ディオニュソスの頭部》
広報動画
監修者メッセージ
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ローマクイズ
クイズに挑戦して、
ローマ博士になろう!※クイズは今後更新していきます。
監修:大谷哲(東海大学 文学部歴史学科西洋史専攻 准教授)
クイズ1
Q.コンスタンティヌス帝の巨像が手にしたこの球体、何を現しているでしょう?
①地球 ②真珠 ③たまご
《コンスタンティヌス帝の巨像の左手(複製)》
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
A.①地球…世界(宇宙)の支配者である象徴ローマ皇帝像がしばしば手にしている球体はグロブスと呼ばれ、地球、あるいは天球を表して、それを手にする者が世界の支配者であることを象徴していました。グロブスは単体の場合もありますが、世界の支配権をもたらしてくれる神がグロブスの上に立つ形で表現されることも多く、勝利の女神ウィクトリアがその代表格です。ちなみに、前6~5世紀の古代ギリシア時代から受け継いだ知識で、地球は丸いということがローマ世界では共通認識でした。大プリニウス(後1世紀)の『博物誌』やプトレマイオス(後1~2世紀)の『地理書』でその認識を確認することができます。
(地球球体説についての参考文献:W・ブラック著『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』平凡社、2021年)
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《コンスタンティヌス帝の巨像の左手(複製)》
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
クイズ2
Q.ローマ皇帝たちの像を見比べると、ハドリアヌス帝とコンスタンティヌス帝が皇帝像の重要なファッション・リーダーだったことがわかります。そのポイントとは?
①目つき ②ヒゲ ③前髪
《アウグストゥスの肖像》
1世紀初頭
ギリシア産大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
《トラヤヌス帝の肖像》
2世紀初頭
パロス島産大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
《ハドリアヌス帝の肖像》
130年頃
大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
《カラカラ帝の肖像》
212-17年
大理石
カピトリーノ美術館分館
モンテマルティーニ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
A.②ヒゲ前3世紀に理髪店が根付いてから、古代ローマの成人男性でひげを伸ばしているのは、三種類の人に限られました。第一に、外観をまるで気にしない、あるいは気に掛ける余裕もない、身分が低い人。第二に、例えば喪に服したりしている、悲しみや不幸のただなかにある人。そして世俗のことを軽視していることを体現する、哲学者の三種類です。しかしハドリアヌス帝の時代、上層階級の男性にヒゲを伸ばすことが流行し、以降の皇帝たちにはヒゲを伸ばす習慣が受け継がれました。ですから、アウグストゥス、トラヤヌス帝はヒゲ無し、ハドリアヌス帝、カラカラ帝はヒゲ在りの像であらわされます。ローマ皇帝像がふたたびヒゲ無しとなるのは、コンスタンティヌス帝以降のことでした。
(参考文献:K・W・ヴェーバー『古代ローマ生活辞典』「ヒゲ」みすず書房2011年、448-9ページ)
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コラム1
《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
ハドリアヌス帝以来、久しぶりにヒゲ無しの姿であらわされることになったコンスタンティヌス帝の像。そこには、コンスタンティヌス以前以後で政治体制が変わったのだというアピールがありました。コンスタンティヌスが帝位に登上る前、ローマ帝国はディオクレティアヌス帝が始めたテトラルキア(四帝統治)体制で収められていました。東西の正帝・副帝、計4名の皇帝が帝国を分担統治する体制です。四人の皇帝は協調姿勢をアピールするため、貨幣や彫像で、ほとんど同じ顔立ちで描かれます。刈り込んだ短髪と短いあごひげ・口ひげがその特徴です。コンスタンティヌス帝はこのテトラルキア体制のライバル皇帝たちを倒し単独支配を確立すると、ディオクレティアヌス帝までのヒゲ面ではなく、若々しいヒゲ無しの顔で像や貨幣を作るようになります。このヒゲ無し皇帝像は、コンスタンティヌス帝以後の皇帝たちの新たなスタンダードとして引き継がれるのでした。
(参考文献:田中創『ローマ史再考:なぜ「首都」コンスタンティノープルが生まれたのか』NHK出版、2020年、27-42ページ)
クイズ3
Q.来日するカピトリーノの牝狼(複製)、実は以前から日本の東京に姉妹がいます(2カ所)。1カ所は調布市・飛田給ですが、もう1カ所はどこに置かれているでしょう?
①日比谷 ②渋谷 ③阿佐ヶ谷
《カピトリーノの牝狼(複製)》
ローマ市庁舎蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
A.①日比谷伝説上、ローマ建国の祖とされる双子ロムルスとレムスは、生まれてすぐに捨てられ、雌狼に育てられたとされています。カピトリーノの牝狼はその伝説を表現した像で、ローマ帝国そのものの象徴と言えるでしょう。イタリア・ローマ市に本拠を置くサッカークラブASローマが狼をエンブレムにしているのもここからきています。そんなカピトリーノの牝狼、以前から日本に有名なレプリカが存在しています。1つは1938年に来日したイタリアの使節団が東京市に贈ったもので、日比谷公園に置かれています。もう一つの飛田給の味の素スタジアム南側の公園に置かれたものは、東京都・ローマ市友好都市提携5周年、「日本におけるイタリア2001年」を記念して、ローマ市から東京都に贈られました。
(参考文献:石井元章「大戦間時代の日本とイタリア : 個人と政治の間で」『ジャポニスム研究』37(別冊),2017年、30-35ページ)
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《カピトリーノの牝狼(複製)》
ローマ市庁舎蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
コラム2
《負傷した牝犬》
前100年頃(原作は前4世紀) ペンテリカス産大理石
ジョヴァンニ・バッラッコ古代彫刻美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo Barracco
前2~1世紀に生きた、ローマの文筆家ウァッロは『農業論』(2.9.6)で、飼い主に忠実な犬の逸話を紹介しています。プブリウス・アウフィディウス・ポンティアヌスという人物が、ウンブリアから羊の群れと牧羊犬を購入したときのこと。牧夫たちはメタポントゥム(現在のベルナルダ)の牧草地と、ヘラクレア(現在のポリコーロ)の市場まで羊と牧羊犬を納品したあと、故郷であるウンブリアの奥地まで帰ったところ、牧羊犬たちは飼い主である牧夫を恋焦がれる思いだけで、数日賭けてウンブリアまで帰ったのだと言うのです。ウァッロは牧夫たちが特別に犬に指図をしたり、何か仕掛けを用いたりしたわけではないことを強調し、「最も重要なことは、犬たちが、一家の仲間として最も頼りになるということである。」と断言しています。ただし、ウァッロはその直後に、犬の売買契約や母犬・仔犬をめぐる所有権をシビアに論じだすので、これもいかにもローマ人の農業書らしいと言えるところです。
クイズ4
Q.今もローマの街にそびえるトラヤヌス帝記念柱、その高さはどれくらい?
①約20メートル(7階建てビル程度)
②約30メートル(10階建てビル程度)
③約40メートル(13階建てビル程度)A.②約30メートル(10階建てビル程度)ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《トラヤヌス帝記念柱の正面全景》
1774-75年 エッチング
ローマ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo di Roma
《トラヤヌス帝記念柱、1/30縮尺模型》
1960年代(原作は113年)
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
《モエシアの艦隊(トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製)》
1861–62年(原作は113年)
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
《デケバルスの自殺(トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製)》
1861–62年(原作は113年)
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
皇帝による2度のダキア遠征での勝利を記念したトラヤヌス帝記念柱には、戦いの様子だけでなく、皇帝の演説やダキア兵の降伏なども描かれました。その高さはおおよそ30メートル、10階建てのビルほどの高さです(ただし、台座を入れると約40メートル!)今回展示されるフリーズ(複製)には、遠征のためドナウ川を航行しようとする船や、ローマ人の文化としてもたらされた円形闘技場が表現され、別のフリーズ(複製)には、捕虜になることを拒んで自らの首に刃をあて果てようとする敵将デケバルス王と、王の自刃を阻止しようと殺到するローマ騎兵たちが描かれています。記念柱の台座には「このような作業に対しどれほどの高さの丘が取り払われたのかを示すため」捧げた旨が刻まれています(考古学調査の結果、実際に記念柱建設のためにこの場所から取り除かれた丘は記念柱の半分ほどの高さだったことが判明しています)。この記念柱を建てた者が、柱を見上げる者に示したかった様々なメッセージを考えてみるのも一興かもしれません。
(参考文献:坂田道生「「ローマ文化」の建設 : トラヤヌス記念柱の犠牲式図像に関する一考察」『美学』65 巻 1 号、2014 年、37-48ページ)
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クイズ5
Q.古代ローマ帝国の誇るのローマ街道は、実はある施設がたくさん建てられていました。ある施設とは?
①公共トイレ ②宿屋 ③お墓
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点 (『ローマの古代遺跡』第2巻より)》
1756年頃 エッチング、エングレーヴィング
ローマ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo di Roma
A.③お墓「すべての道はローマに通ず」と後の世に格言が生まれるほどに有名だったローマ街道は、ローマ市郊外では驚くほどたくさんのお墓が両脇に立ち並んでいました。実はローマでは市内は生きた人間のための空間であるとされ、死者のための場所、すなわちお墓は、ごく限られた特別な人以外は、市外に建てることが定められていました。いわゆる「十二表法」にもその規定があります。とある研究者は有名なアッピア街道を「幽霊街道」と名付けてすらいます。金持ちは自慢のために豪勢に、そうでない人もささやかに、自分の記憶が永遠に残ることを祈って、道行く人に見えるところにお墓を立てました。ピラネージが描いたのはもちろん空想混じりのアッピア街道ですが、いにしえから現代まで街道を行く人を驚かせてきたたローマ人の墓のいくつかは、今も実際の街道に残っています。
(参考文献:南雲泰輔「ローマ街道沿いの墓地と感情」、南川高志・井上文則編『生き方と感情の歴史学:古代ギリシア・ローマ世界の深層を求めて』、山川出版社、2021年4月330-346頁)
(参考動画:ローマ街道 タイムトラベル アッピア街道 イタリア横断580キロ(NHKオンデマンド))※ご視聴にはNHKオンデマンド会員登録およびご購入が必要です。
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ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点 (『ローマの古代遺跡』第2巻より)》
1756年頃 エッチング、エングレーヴィング
ローマ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo di Roma
クイズ6
Q.ローマ展で見られる通称カザーリ家の祭壇(複製)に描かれる、トロイアの王子パリスとローマ建国者ロムルス・レムス。彼らの知られざる共通点とは?
①生みの親が神
②育ての親が動物
③親がいない《ティベリウス・クラウディウス・ファウェンティヌスの祭壇、通称カザーリ家の祭壇(複製)》
1933-37年(原作は祭壇:2世紀後半、銘文:3世紀以後) 雪花石膏
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civiltà Romana
《ヘラクレスと息子テレポス(ラストラ・カンパーナ)》
2世紀 テラコッタ
ローマ文明博物館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
A.②育ての親が動物ローマ建国の祖と神話で語られるロムルス、レムスが、王家の娘レア・シルウィアと戦神マルスの間に生まれた子で、捨てられたのちに雌狼に育てられたことは大変有名ですが、実はトロイア王子パリス(「パリスの審判」や人妻ヘレネとの略奪婚でトロイア戦争を引き起こしたとされる伝説上の人物)にも、ロムルスやレムスと大変にかよったエピソードがあります。パリスの父であるトロイア王プリアモスは、王妃ヘカベがパリスを産む際に見た、自分が生んだ松明の火のためにトロイアが焼け落ちるという夢と、夢占い師の「この子は災厄の種になる」という言葉を信じて、生まれたばかりのパリスをイダ山に捨てさせます。ところが捨てられた赤子は雌熊に拾われ、乳を与えられて生き延び、成長したのちにふとしたことがきっかけで王家の子と判明してトロイア王子に戻るのでした。パリスが雌熊に育てられたという神話を伝えるのは、後1~2世紀のアポロドロスという作家。ローマ人は祖と仰ぐ神話上の英雄たちが、野生の動物に育てられたというエピソードが大好きだったようです。ローマでも人気の高かったヘラクレスの息子テレポスが、牝鹿に育てられたというエピソードも、この時期好んで図像に描かれました。
(参考文献:松田治『ローマ建国伝説 ロムルスとレムスの物語』講談社学術文庫、2007年;高津春繁訳『アポロドーロス ギリシア神話』岩波書店、1953年、153-154頁)
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コラム3
《リウィアの肖像(複製)》
制作年不詳(原作は1世紀初頭?) 石膏
アラ・パキス美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali /Archivio Fotografico del Museo dell’Ara Pacis Augustae
《女性の胸像》
頭部:1世紀末-2世紀初頭、
胸部:2世紀後半 ギリシア産大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
《マティディアの肖像》
120-21年頃 大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
《女性の肖像》
3世紀初頭 大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
ローマ展にならぶ女性の肖像は、ちょうど帝政時代のローマで流行した、代表的な女性の髪形を時代別に見せてくれます。皇帝アウグストゥスの妻がモデルの「リウィアの肖像」は、前1世紀後半に流行した前髪を巻き上げるスタイル(アウグストゥスの姉が好んだ髪形)に、さらにサイドを波立たせるアレンジ。2人は時代のファッションリーダーでした。顔に沿ってカールを巻く髪形(No.18「女性の胸像」)は後1世紀中頃からの流行。有名な皇帝ネロの母、アグリッピナの髪形をアレンジしたものだといわれます。トラヤヌス帝の姪がモデルの「マティディアの肖像」は、トラヤヌスの一族の女性たちが好んだ、冠のように髪の毛を結い上げるスタイルを表していて、これも当時の女性たちに人気でした。3世紀初頭の「女性の肖像」(No. 22)で注目したいのは、額からはみ出ている地毛。ローマでは女性のウィッグ、つけ毛は広く用いられています。その他ピンセット、ヘアネット、カールを作るための熱した「こて」、髪の色を変える染料(男性も用いた)、仕上げには髪の毛用の香料があったことが、様々な文献や考古学的な遺物から判明しています。
(参考文献:河島思朗『古代ローマ ごくふつうの50人の歴史―無名の人々の暮らしの物語』さくら舎、2023年、145-148頁)
クイズ7
Q.ド派手な演出で知られる古代ローマの剣闘士ショー。有名な将軍ポンペイウスはこの見世物のため、何頭の豹を登場させたでしょう?
①10頭 ②約200頭 ③約400頭
《豹と猪の群像》
1世紀 ペンテリカス産大理石
カピトリーノ美術館分館 モンテマルティーニ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
A.③約400頭古代ローマ人が、円形闘技場での残酷な剣闘士ショーに熱狂していたことはよく知られていますが、興行では動物対動物、動物対人間のショーも多く、遠方から連れてこられたエキゾチックで獰猛な野獣が殺される見世物が好まれました。カエサルとの同盟・ライバル関係で知られるポンペイウスは、この種の見世物のため500頭のライオン、410頭の豹、20頭の象を用意しました。ちなみに皇帝ティトゥスは、1日の見世物だけで5000頭の野獣を殺させています。「豹と猪の群像」で表現されるもう一方の猪は、古くから勇敢な狩人の獲物に相応しいとされ、ハドリアヌスのような皇帝も猪狩りを行いました。いまもローマ市に残る「コンスタンティヌスの凱旋門」円形浮彫りには、まさにハドリアヌスが行った狩りの様子が描かれています。
(参考文献:大プリニウス『博物誌』8巻29章71節、坂田道生「《ハドリアヌスの円形浮彫り群》の図像解釈について : 犠牲式と狩猟の図像伝統に照らして」『美術史』63(2)、2014年、256-271頁、本村凌二『帝国を魅せる剣闘士―血と汗のローマ社会史』山川出版社、2011年)
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《豹と猪の群像》
1世紀 ペンテリカス産大理石
カピトリーノ美術館分館 モンテマルティーニ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
コラム4
《ディオニュソスの頭部》
2世紀半ば 大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
古代ギリシア神話では、葡萄酒の神として知られるディオニュソス。永遠の都ローマ展に出品中の大理石製「ディオニュソスの頭部」像は、日本の美術系学生たちからは長らく、「アリアス」の名で親しまれてきた石膏像の原作でもありました。1876年に設立された日本初の官立美術学校、工部美術学校に招聘されたヨーロッパ人教官たちは、西洋古代彫刻から複製された石膏像を持参し教材にしました。そして東京美術学校に1896年に設立された西洋画科のカリキュラムと入学試験科目に石膏デッサンが設定されたため、ながらく日本の美術系学校・大学や予備校で、芸術家を目指す若者たちは石膏像をデッサンする青春を送るようになったのです。「アリアス」という日本独特の石膏像名称は、ディオニュソスの妻となったアリアドネの名から来ていると思われますが、いつごろから生まれ、定着したのかはわかりません。しかし、茨城県天心記念五浦美術館所蔵の「東京美術学校学生製作品」(おそらく1896~1932年入学生による)には、32枚の「アリアス」石膏像デッサンが含まれますし、小磯良平らが刊行した『デッサンの技法』(美術出版社、1955年)には「アリアス胸像」をデッサンする際には首と肩のつながりを意識するべきとのアドバイスがあり、この石膏像の存在と名称が日本の美術界に定着していた様子がうかがえます。
(参考文献:荒木慎也『石膏デッサンの100年―石膏像から学ぶ美術教育史』アートダイバー、2018年)
コラム5
《マイナスを表わす浮彫の断片》
前1世紀末-後1世紀、ペンテリカス産大理石
カピトリーノ美術館蔵©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini
「マイナス」(狂える女の意)と呼ばれる女性たちは、古代ギリシアの酒の神、ディオニュソス(バッコス)の信女たちのことを指します。家を捨て、酒と音楽に熱狂して酒神への儀式を行う彼女らは、生贄にした動物や子供の生肉を食うとまで言われました。古代ギリシアの悲劇作家エウリピデス作『バッカイ』(バッコスの信女)は、古代ギリシア人が抱いた、そんな信女たちのイメージを表しています。ローマ社会にも、酒神バッコスに捧げる密儀が早くから伝わります。この密儀が男女を問わず多くの参加者を集めるようになると、前186年、ローマ元老院は7千人以上の男女を逮捕し、数百人を死刑にした上、バッコスの密儀を禁止しました。このローマ共和政史上有数のスキャンダルは、ローマ政府の宗教弾圧とも、秘密結社の存在を嫌うがゆえの治安目的の行為であったとも言われます。しかしこの禁令を刻んだ碑文(『ラテン碑文集成』第1巻第2版、第581番碑文)をよく読むと、当局の許可を得た5人以下の会合であれば認可されていたようで、その後もバッコスはローマ社会で熱心に崇拝され続けた神でした。
(参考文献:古山正人ほか編訳『西洋古代史料集』東京大学出版会、1987年、133-135頁、逸見喜一郎『ソフォクレース『オイディプース王』とエウリーピデース『バッカイ』―ギリシャ悲劇とギリシャ神話』岩波書店、2008年)
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関連講演会
※終了しました。
9月16日(土)より東京都美術館にて開催される「永遠の都ローマ展」を記念して、本展監修者による講演会を、イタリア文化会館と立教大学の共催にて開催します。本講演会では、展覧会の出品作を交えながら、カピトリーノ美術館の歴史的変遷、およびローマ市民と古代美術との関係について論じます。
「古代美術とローマ市民 ――教皇シクストゥス4世の寄贈(1471年)からローマ首都宣言(1871年)にいたるまでのカピトリーノ美術館――」
【開催日時】2023年9月13日(水) 18時~20時
【場所】イタリア文化会館ホール(東京都千代田区九段南2-1-30)
【講師】
クラウディオ・パリージ=プレシッチェ氏(ローマ市文化財監督官、本展監修者)
加藤 磨珠枝氏(立教大学文学部キリスト教学科教授、本展監修者)
【主催】立教大学文学部キリスト教学科、イタリア文化会館
【後援】駐日イタリア大使館、毎日新聞社
【参加費】無料。事前申し込みが必要です。
※詳細は、イタリア文化会館HPページをご覧ください。
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ローマ展オリジナルコースター
「永遠の都ローマ展」開催を記念して、上野近隣の5つの商業施設にて割引クーポン付のオリジナルコースター(5種類)を配布いたします。
【配布期間】2023年9月9日(土)~9月30日(土) ※なくなり次第終了
【配布施設】アトレ上野、エキュート上野、上野マルイ、松坂屋上野、パルコヤ
※対象ショップでお買い上げの方に配布いたします。
※配布対象ショップは各施設のホームページをご覧ください。
・アトレ上野
・エキュート上野
・上野マルイ
・松坂屋上野
・パルコヤアトレ上野
《カピトリーノの牝狼(複製)》エキュート上野
《カピトリーノのヴィーナス》上野マルイ
《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》松坂屋上野
《イシスとして表わされたプトレマイオス朝皇妃の頭部》パルコヤ
《ローマ教会の擬人像》 -
ローマ展特別コラボレーションメニュー
「永遠の都ローマ展」開催を記念して、アトレ上野EAST1Fのレストラン「ブラッスリー・レカン」にて、特別コラボレーションメニューが登場します。
古代ローマ時代から食されていた食材を使用したり、展覧会の出品作品からインスピレーションを受けたシェフ特製のオリジナルコースを、JR上野駅の旧貴賓室を利用した店内で、優雅な雰囲気を楽しみながらお召し上がりいただけます。【提供期間】2023年9月16日(土)~12月10日(日)
【提供メニュー】ローマ展スペシャルメニュー(アミューズ/前菜/メイン/デザート/コーヒー又は紅茶) ¥3,900(税込)
*営業時間中提供
【場所】アトレ上野EAST1F ブラッスリー・レカン
【営業時間】11:00~22:30(L.O 21:30)
ブラッスリー・レカンHPローマ展オリジナルステッカー
「永遠の都ローマ展」開催を記念して、オリジナルステッカー(3種類)を都内各所で配布しています。
※なくなり次第終了《カピトリーノのヴィーナス》
《カピトリーノの牝狼(複製)》
《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》
■配布店舗紹介
〇Giolitti
イタリア王室御用達のイタリア・ローマの老舗ジェラート店です。
本店はローマのスペイン階段の近くにあり、映画「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーン演じる「アン王女」が頬張っていたジェラートはジョリッティのものでした。
ジョリッティ 道玄坂通 ジョリッティカフェ有楽町店
※アクセス・営業時間等はこちらの公式Instagramでご確認ください。〇イータリー
イタリアの食を通じて広がる上質なライフスタイルを提唱するイータリー各店舗にて、限定カラーオリジナルステッカーを配布しています!
※なくなり次第終了
イータリー 銀座店 湘南店 原宿店 丸の内店 日本橋店
※アクセス・営業時間等はこちらのHPでご確認ください。《カピトリーノの牝狼(複製)》
《カピトリーノの牝狼(複製)》
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NHKジュニアガイド
本展の鑑賞手引きとして、小学校高学年から中学生を対象に作成しました。
ご来場の際に、ぜひ印刷をしてご持参ください。
NHKジュニアガイドのダウンロードはこちら(PDF/約5MB)
※特別展「永遠の都ローマ」ジュニアガイド/印刷用(おもて・うら全2ページ)
A3に印刷し、四つ折りにしてご利用ください。 -
番組情報
永遠の都ローマ展の開催期間、NHKではローマに関連する番組を放送します。
日曜美術館 アートシーン Eテレ
10月15日(日)9:45~10:00
10月22日(日)20:45~21:00 (再)予定
「日曜美術館」公式HP
特集「光と影、永遠の都ローマの物語」
10月28日(土)午後6:00~7:29 NHK BSプレミアム/BS4K
10月29日(日)午後7:00~8:29 NHK BS8K
11月1日(水)午後5:00~6:29(再) NHK BS8K
11月3日(金)午前10:00~11:29(再) NHK BS8K
11月5日(日)午後2:00~3:29(再) NHK BS8K
11月7日(火)午後5:00~6:29(再) NHK BS8K
11月9日(木)午前11:00~12:29(再) NHK BS8K
11月11日(土)午後7:00~8:29(再) NHK BS8K
11月18日(土)午後1:00~2:29(再) NHK BSプレミアム
ローマはなぜ永遠なのか、現地取材から浮かび上がるのは、光と影の歴史を生き抜いてきたローマの不屈の精神。世界でも唯一無二の都、ローマの魅力に8K高精細映像で迫る。
門外不出の至宝「カピトリーノのヴィーナス」や、度肝を抜く大きさの「コンスタンティヌス帝の巨像」などもゲストと専門家と共に鑑賞する。
出演:トラウデン直美、加藤磨珠枝(立教大学 教授)、浅井理アナウンサー
(WEB配信)
NHKラーニング「カピトリーノ美術館の歴史とカピトリーノのヴィーナス」
「NHKラーニング」公式HP
永遠の都ローマ。その町の中央に建つカピトリーノ美術館は世界最古の美術館の一つ。カピトリーノ美術館はいかにして始まり、発展したのか?ローマのシンボルである「カピトリーノの牝狼」を紹介しつつ、その歴史を紹介。さらにはカピトリーノ美術館の至宝「カピトリーノのヴィーナス」の知られざるストーリーにも迫る。
9月23日(土・祝)午後7時30分からの「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」でローマ展関連作品が紹介されます。ぜひご覧ください!
有吉のお金発見 突撃!カネオくん
いろんな秋のお金のヒミツを大発見SP!
芸術の秋:古代ローマ。コロッセオに隠された最新技術!?現代にも劣らない驚きの文明に迫る。
9月23日(土・祝)午後7時30分~午後8時50分 NHK総合
「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」公式HP
びじゅチューン!
毎週火曜 午後5時30分~
(再放送)毎週金曜 午後11時50分~
MIXびじゅチューン!
毎週水曜 午前8時30分~
(再放送)毎週金曜 午後3時30分~
「びじゅチューン!」公式HP
「祖母のコロッセオハット」
9月19日(火)/22日(金)放送予定
「ひそひそと、秘儀の間で」
9月26日(火)/29日(金)放送予定
MIXびじゅチューン!
『古代ギリシャ・ローマ旅のしおり』
9月27日(水)/29日(金)放送予定 -
東京展会場写真